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冬眠からさめて 第一話


 今年も、冬眠の季節がやってきた。
 熊の仔ケンは、毎年、この時期になるとゆううつになる。

  今年も、おねしょしちゃうのかな……

 通常、熊は冬眠ではなく、冬ごもりを行うのが一般的だ。
 しかし、ケンの場合、一度寝ると暖かくなるまで起きないので、冬眠というのが正しいだろう。

 冬眠中は新陳代謝が押さえられるとはいえ、何ヶ月も寝っぱなしだと、おしっこのたまる袋はいっぱいになってしまう。
 ケンは今年でみっつになる。

  もう子供じゃないんだから、がんばらないと……

 そうして、ケンは眠りについた。


 初めは楽しい色々な夢をみているが、次第に水に関する夢が多くなる。
 川で遊ぶ夢。たくさん水を飲む夢。おしっこをがまんする夢。
 そして、おもらししちゃう夢。


 はっとして目が覚めると、辺りはまだ少し寒かった。
 地面に目を向ける。

  ほっ……

 少し目覚めるのが早かったおかげか、今年はおねしょせずに済んだらしい。
 しかし、おしっこの袋がいっぱいなのは変わらない。
 気を抜いてしまったためか、少しこぼれてしまった。

  あっ……待って……

 ぎゅうっとおしっこの出るところを押さえる。
 こぼれ出たおしっこが、地面に水玉模様を作る。

 なんとか止まってくれた。

  ちびっちゃった……早くおトイレにいかなきゃ……

 ケンはおしっこの袋をかばいながら、よろよろと巣を出た。

  せっかくおねしょせずに済んだのに、おもらしなんていや!


(2010/09/11 15:00)
 

 
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