冬眠からさめて 第二話しばらくすると、草陰から熊の仔供があらわれた。 「おはよう、ケンちゃん! 今年は早起きだね」 「あっ、メグちゃん」 ケンはあわてて、股間を押さえる前足を離した。メグは、近くに済む熊の女の仔。ケンにとって、頼れるお姉さんだ。 「お、おはよう」 女の仔にみっともないところは見せられない、そう考えるケンは、メグに悟られ無いよう、必死で我慢していた。 ふいに、強い尿意が襲ってきた。 「あっ!」 ケンはすばやく振り返り、同時に股間を強く押さえた。わずかにもれた尿が、肉球を濡らした。 「どうかしたの?」 メグが小首をかしげて尋ねた。 「な、なんでもないよ」 ケンは慌てて取り繕った。 「ふーん……。あっ、そうだ! そっきそこで、すっごくキレイな花が咲いていたんだ。一緒に行きましょうよ」 「えっ。ご、ごめん。ぼくちょっと用事があるから」 そう言うやいなや、ケンはすばやくメグの前から立ち去った。残されたメグは、変なケンちゃん、とつぶやくのだった。 (2010/09/11 15:00)
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