第六話 克服彼女は主人の声を聞いて、我に返った。そして、自分の置かれている状態を認識した。 どうしよう、と彼女が途方にくれていると、主人はその巨大な物体――車のすぐ近くに寄って、しゃがんで彼女を呼んだ。行かなきゃいけない、と思うけど、怖くて尻込みしてしまう。さっき全部出たはずなのに、またおしっこをチビってしまいそうになる。それでも主人は、やさしく彼女の名を呼び続ける。 (そうだ、御主人様が付いているから大丈夫) そう自分に言い聞かせ、一歩、また一歩と主人の元へ歩み寄っていく。 遂に主人の元へたどり着くと、主人は彼女を愛情一杯に迎え入れた。 それ以来、彼女は車を見ても怖がらなくなった。 (私はもう、一人じゃないのだから) 愛されるということ 完 |