ターくんの特別な日4 (な、なんで? さっき、全部出ちゃったのに……) 先ほどのおもらしが夢ではないことは、ターくんが一番良く知っています。おしっこを少しだけ出すのに失敗して、ほとんど全部出てしまいました。なのに、わずか30分で再びおしっこがやってきたのです。 ターくんのやわらかくてふわふわしていた体毛は、全体的に湿り気を帯びて縮んでいます。特にお腹の毛は、半乾きになって肌に張り付いています。 (うぅ……気持ち悪いよぉ……) ターくんは濡れた体毛に不快感を覚えました。 (ご主人、まだ帰ってこないの?) ターくんはゆっくり立ち上がると、小屋から出ました。部屋のドアを見つめますが、主人が帰ってくる気配はありません。 おしっこのにおいがしたので振り返ると、ケージの隅にぐっしょりと濡れたクッションがありました。ターくんは、しばらくそれを眺めていましたが、やがて顔を背け、激しく首を振りました。 (ご主人、早く、早くぅ……) ターくんはケージの出入り口付近を、せわしなく歩き続けます。 (おしっこ、おしっこ……) 歩くたびに、前後の足の爪が床に当たり、チッチッチッという音が部屋の中に響きます。 「んっ……」 ターくんはふいに立ち止まると、後ろ足の間に力を込めました。 (おしっこ、出ちゃう……) ターくんは後ろ足を擦り合わせながら、その場で足踏みをしました。 (はぁはぁ……) おしっこのしたい感じが少しだけ遠のくと、再びケージの中を歩き始めました。 (ご主人……まだなのぉ?) ターくんは何度もその行動を繰り返します。 (このままじゃ僕……また、おもらししちゃうよぉ……) そう思った時です。 『ちょろ……』 ケージの床に水の滴る音が聞こえました。 (……! やだやだやだー!) ターくんは後ろ足のつま先を立てて、激しく足踏みをしました。爪が床に当たって大きな音が鳴りました。水の音は消えましたが、おしっこが出ている感じは消えません。 「うわぁぁぁん!」 ターくんは、とうとう泣き出してしまいました。 (もういいよ! 僕もうしらない!) ターくんはケージの隅にある濡れたクッションに飛びつくと、全身に込めた力を抜きました。 その瞬間、部屋のドアが開いたのです。 |