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ターくんの特別な日


(……ご主人が帰ってくる前に乾かさなきゃ)

 ターくんは、もじもじと後ろ足を擦り合わせながら、濡れて変色したクッションを咥えて、ケージの隅へ移動させました。

(熱い息を当てれば、すぐに乾くよね?)

 ターくんは、まだ上手に炎を吹けませんが、ドライヤーのような熱い息を吹くのは得意です。クッションから少し離れて、大きく息を吸いました。

『しゅぃぃぃ……』

(わぁ! だっ、ダメー!)

 お腹に力を入れたことで、おしっこが飛び出してしまいました。慌ててクッションに飛び乗り、後ろ足の間を密着させます。

(はぁ……はぁ……!)

 ターくんは腰を動かして、おしっこを止めようと一生懸命がんばります。しかし、クッションは少しずつ変色を広げていきました。ターくんの目から、熱いものが込み上げてきます。

(もうだめぇ! おしっこ、我慢できないよぉ!)

 そんな時、ターくんは思い付きます。

(少しだけ出して、後でまとめて乾かせば……)

 そう思うが早いか、ターくんは震える後ろ足に力を入れ、ゆっくりと腰を浮かせました。

『じゅうぅぅぅーーー』

 すぐさま、クッションの中に、おしっこの注がれる音が響きました。我慢に我慢を重ねたおしっこは、最初は勢いがありません。ターくんの体中に、なんともいえない感覚が広がります。

(はぁ〜〜〜……)

『しゅうぅぅぅーーー』

 時間が経つにつれて、少しずつおしっこの勢いが強くなり、音が変化しました。ターくんは「少しだけ」で止めることなんて、すっかり忘れていました。ただただ、その快感に身を委ねるだけでした。

『しゅうぅぅぅ……』

 長かった放水音も徐々に小さくなり、それが完全に消えると、ターくんの体がブルッと震えました。

(あー、気持ちよかっ……た!?)

 ターくんは我に返りました。クッションは、水浸しでずっしりと重くなっており、吸い込めなかったおしっこが床に広がっています。熱い息を吹きかけたところで、とても乾かせそうにありません。
 ターくんは怖くなって、小屋の中へ駆け込みました。

(これは夢だ。悪い夢なんだ……)

 ターくんは丸くなってギュッと目をつぶりました。


 30分後、再びターくんの体が小さく震えました。薄目を開けて、涙をにじませます。

(どうしよう。また、おしっこしたくなっちゃったよぉ……)


 

 
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