災い転じて 第三話ぼくは、あわてて出かかっていたおしっこをとめた。 もう少しで、クッションを濡らしちゃうところだった。 (あ、あれ。寝ぼけてたのかな?) でも、さっきトイレまで行ったはずなのに……。 体が大きく震える。 考えていても仕方がない。もう一度トイレに行かなきゃ。 「おしっこ、おしっこ」 もうおしっこのことしか考えられない。 尿意はどんどんきつくなり、前足で押さえてないともれちゃいそうになる。 「もっちゃう、もっちゃうよぉ!」 なんとかトイレにたどり着いた。 砂のトイレに足を入れる。 「うん。この足の感触、間違いない」 ここは間違いなく、いつもぼくが使っているトイレだ。 目をつぶって、再度、おしっこの体勢に入る。 「イーブイ! あんた何しているのよ!」 またご主人さまの声が聞こえて、足元に目を落とす。 そこには、クッションの上でおしっこしようとしている自分がいた。 「な、なんでぇ……」 ぼくの瞳から涙がこぼれ落ちた。 (2009/11/14 16:50)
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