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エル登場


「僕と契約してください」
「ハァっ!?」
 レッドとショコラは状況が飲み込めず、その場で動きを止めるしかなかった。

 ここは、飛行船アスモデウスの倉庫。前回ショコラの失態によって廃墟と化したため、2人はその復旧作業にあたっていた。レッドはホネ柄、ショコラは肉球柄の入ったバンダナを頭に巻き、手にはハタキを持っていた。
 そんな中、ガレキの中からネコヒトが現れて、開口一番にそう言ったのである。
「報酬には巨額の富を用意します。どうです? 悪い条件ではないと思いますが」
(……というか、お前誰なんだよ)
 レッドが答えに困っていると、ショコラが目を輝かせ、二つ返事で承諾した。
 こうして、レッドとネコヒトの契約が成立したのである。
「巨額の富〜♪」
 ショコラはご機嫌だが、レッドは心配だった。
(こんな契約で大丈夫か?)

 3人は船の居住区に場所を移した。レッドとネコヒトの少年は、向かい合わせでテーブルに付き、ショコラはニコニコしながらお茶を淹れている。
 その少年は、エルと名乗った。"あるもの"を探して転送を繰り返すうちに、偶然ここにたどり着いたのだという。
「1人で探すより、3人で探したほうが見けやすいかと思いまして」
 その"あるもの"が見つかるまで一緒に探す、というのが契約内容らしい。
「なぁ。その"あるもの"ってのは、一体どんなものなんだ?」
「そうですね。命よりも大切なもの……と言っておきましょうか」
 レッドが尋ねると、エルは目をつむってそう答え、ショコラの淹れたお茶を飲んだ。
 アチッ。エルは小さく叫び、息を吹きかけてお茶を冷まそうとする。どうも要領を得ないな、とレッドは思った。
「そうなんだ。早く見つかるといいね〜」
 ショコラは、心ここに有らずといった感じだ。
「とりあえず、船の修理のためビズラに向かうけどいいか?」
 レッドがそう言うと、エルの体が一瞬跳ねた。
「ビ、ビズラですか?」
「ああ、船の修理素材がここでしか手に入らないらしいんだ」
「え、ええ。もちろんかまいませんけど……」
 エルの体がわずかに震えているのを見て、レッドは頭の中にクエッションマークを浮かべた。


(2010/11/30 22:20)
 

 
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