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ビズラでの受難(1)


 今思い出しても震えが止まらない。あれは今から250……いや、180年前だったか。

 エルは"あるもの"を探すため、ビズラに来ていた。話に聞いていた通り、そこは虫だらけだっだ。とても普通の精神状態では探索など出来そうになかったので、マタタンプドリンクの力を借りた。そこまでは良かったのだが。
(少々、飲み過ぎてしまいましたか)
 酔っ払ってしまった訳ではない。大量に飲んだドリンクが外へ出たいと体の中で暴れていたのだ。
(もうちょっと、待ってくださいよ)
 あと少しでこの洞窟の探索が終わる。
(この程度、終わるまで我慢できるでしょう)
 下腹部を撫でながら、エルは余裕の表情を浮かべていた。
 しかし、普段マタタンプドリンクを飲まないエルにとって、それは大きな誤算だった。
 1つ歩を進めた時、急激に尿意が高まった。エルは困惑した。
(な、なんでこんなに強く……くっ)
 思わず右手で両足の付け根を押さえた。顔がカァっと熱くなる。恥ずかしい格好だと分かっていても、このままではもっと恥ずかしいことになりそうだった。
(やむを得ません。今回はここで切り上げましょう)
 エルは体を震わせながら、洞窟から脱出するためのノノを発動させようとした。
 その時、どこからともなくキノコノミが現われ、ピョンピョン飛び跳ねながら体にまとわりついて来た。
「きゃっ、あっち行ってよぅ!」
 慌てて手で振り払うが、キノコノミは離れようとしない。
 両手で股間を押さえて走り出すが、それでも追いかけてくる。
「やぁ! ついてこないでぇ!」
 エルは涙目で叫んだ。
 このままではノノが発動できない。


(2010/12/31 00:30)
 

 
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